2013年3月24日日曜日

ドッグ・オブ・ザ・ベイ/オーティス・レデイング


Sitting On The Dock Of The Bay/Otis Redding




♬ 朝日の上に座って
夜も座っているだろう
船が港に入って来るのを見ながら
そして船がまた遠ざかっていくのを見ながら

港のドックに座って
塩の満ち引きを見ながら
ただ港のドックに座って
時間を無駄につぶしている

故郷のジョージアを離れ
サン・フランシスコ湾に向かった
ボクには何も生きがいもなかったから
何も自分にいいことが起きそうもなかったから
だからただ
港のドックに座って
潮の満ち引きを見ながら
ただ港のドックに座って
時間を無駄につぶしているんだ

何も変わりそうもない
すべてが同じままだ
10人の人の言うことがボクにはできない
だからいつも同じままでいるのさ、

ここに座って骨休めをして
この孤独とずっと付き合って行くんだろう
2000マイルさまよって
辿り着いたこのドックを家にするだけだ

だからただ
港のドックに座って
潮の満ち引きを見ながら
ただ港のドックに座って
時間を無駄につぶすのさ ♬

このネガティブな憂鬱と罪悪感が全編を覆っている曲<ドッグ・オブ・ザ・ベイ>が世界的大ヒットになることをオーティス・レディングは知っていた。収録を終えると「この曲は、俺の初めてのミリオン・セラーになるよ!」と予言した。そして収録後、わずか3日後の1967年12月10日、彼は重大な任務を終えたように大空で天に召された

彼は、もういなかったが、その通りになった。翌年の1968年3月16日に全米1位を獲得、年間チャートでも6位に入る大ヒットを記録となり、世界に波及した。

この曲は自分の命を越え、よろ大きな時空を越えて不滅の名曲になることを知っていた。彼は知っていた、蝋燭の燭台のようなレコード盤から聴こえてくるのは、解放、自由、独立に関する宣言だ。淡々となにもしない情景が静かに歌われる。

頼るものはなにもない。邪魔するものもない。悲観もないが光明もない。果てしない孤独だけが癒しだ。

10人の人の言うことがボクにはできない
だからいつも同じままでいるのさ。

それでいいのだと、自分を肯定している。これこそが自由の基本であり、受け入れるからこそ、歓喜がある。
恐ろしくシンプルで力強い曲だ。

この曲に匹敵するのは自殺者の手記が元ネタの<ハートブレイクホテル>だ。
死ぬのも、ただの一日なら、このレコードもただの一枚にすぎない。

しかしオーティスは知っていた。
ただの一枚にすぎないが、他にすることものない一枚の輝きを知っていた。








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