2013年2月3日日曜日

ハリケーン/ボブ・ディラン


Hurricane/
BOB DYLAN
太った魂を揺さぶり、叩き起こす。
この歌は「警報」だ。
 

ボブ・ディラン、一世一代の大傑作<ライク・ア・ローリングストーン>と双璧をなす曲だ、コレは。
8分を超える大作は正義とともに疾走する。疾走する果てがよくわからないけど、その分、一層アドレナリンが体内を駆け巡る。

あまりの振動にココロを揺らさずに聴くのは至難の技です。揺れまくり必至。
電車で聴いたら倒れます。振り子列車なら失神です。

このハリケーンとは、
米東岸で多くの人々を痛めつけたあのハリケーンではありません。 

映画『ハリケーン』が公開されているので、映画を観たら意味がよく分かります。
実際の事件に関連して創られました。


ボクサー、ルービン「ハリケーン」・カーターは無実でありながら殺人罪で有罪とされた。ディランはカーターを信じて、この事件を広く世間に知らせることに挑戦した。味方を得て再審が行われたが、再び有罪となった。しかし1988年、22年間牢獄で過ごした後にやっと、この判決が人種差別に基づくものだったとして釈放された。

この曲がなんだったのか分かったいま、ボブ・ディランの最高傑作に位置づけても問題ないくらいに素敵です。この曲はアメリカ政府の政策を鋭く批判した曲でありながら、1984年大統領選の出馬した候補者にも愛されたのです。

このシンプルでパワーに満ちた曲によってボブ・ディランの支持者になった者も多い。
ボブ・ディランの陰気な雰囲気に逃げたくなる人もシビれること間違いなしのロックンロール史上に燦然と輝く至上の名曲です。

ボブ・ディラン の最大の魅力はその声にあります。
その 声が明確な主張をしたとき、声はさらに威力を増し、無敵なまでにたくましい声になります。特に<ハリケーン>はウルウルです。

声の魅力でいうなら最高峰にエルヴィス・プレスリーが擧げられます。
ボブの声の魅力はエルヴィスのそれとは異質。
エルヴィスはボブ・ディランの作った<明日は遠く>を歌っているので、聴き比べるとこれが同じ曲かと思うぐらいに違うからおもしろい。
それはアレンジされているわけではなくて、声による違いと文化の 違いで曲がまるで変わってしまう。

ハードウェアでは遜色のない日本が、ソフトウェアではアメリカの相手にならないほど弱い。その理由が分かるような気がします。
それほど両者の声の魅力はドキドキするほど創造的。これぞ!ソフトウェアの力です。アメリカの偉大です!

その魅力あふれる声が、<ハリケーン>では一層魅力的に聴く者をなぎ倒す。
倒されてしまってください。気持ちいいですから。

激しい!声がシャウトしているのではない。ボブの文化がラップ状態でシャウトします!
くり返されるフレーズの中に反撃と同じだけ挫折が内包されている。その分激しい。当然、聴く者は 激しく揺れます。壁さえも揺れる。


♬君がもし黒人なら、通りには出ないことだ。
警官につけ回されたくなければ♬

ただ日々だけが無意味に過ぎていく。22年間だ!気が遠くなりそうな無意味。
単調なサウンドのくり返しが時間の経過とともに「無意味」の凄みを増していく。ディランが聴く者の心を鷲掴みにして引き込んで行く。。。。

素晴らしい!
一生の間で、こんな曲とどれだけ出会えるだろうか。

この曲の姿勢はロックンロールの本質そのもの、生きるうえでパンクそのもの。
AKBを8分聴いても人生の8分は過ぎる。
<ハリケーン>を聴いても8分過ぎる。


個人が選択権を持っている。



ここではライブバージョンをお楽しみいただけますが、この曲のオリジナルバージョンを収録したアルバム『DESIRE/欲望』はボブ・ディランのキャリアを代表する素晴らしい一枚です。シングル盤でも<ハリケーン>はリリースされましたが、アルバム収録バージョンとは違っています。


欲望
1.ハリケーン
2.イシス
3.モザンビーク
4.コーヒーもう一杯
5.オー,シスター
6.ジョーイー
7.ドゥランゴのロマンス
8.ブラック・ダイアモンド湾
9.サラ ※〈CD/SA-CDハイブリッド仕様〉 

ザ・ベスト・オブ・ボブ・ディラン VOL.2
1.シングス・ハヴ・チェンジド
2.激しい雨が降る
3.悲しきベエイブ
4.サブタレニアン・ホームシック・ブルース
5.寂しき4番街
6.追憶のハイウェイ61
7.雨の日の女
8.アイ・ウォント・ユー
9.アイル・ビー・ユア・ベイビー・トゥナイト
10.マイティ・クイン
11.運命のひとひねり
12.ハリケーン
13.チェンジング・オブ・ザ・ガード
14.ライセンス・トゥ・キル
15.シルヴィオ
16.ディグニティ
17.ノット・ダーク・イエット
18.いつまでも若く(Biographヴァージョン)

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